痔核とは
痔核とは排便時などに肛門から瘤(こぶ)状のものが飛び出してくる病気で、一般的には「いぼ痔」と呼ばれています。
痔核の症状
痔核の症状は、以下のものが挙げられます。
- 脱出・・・瘤(こぶ)状のものが脱出します。特に排便時に多く見られます。
- 出血・・・拭き取る時に血が付いたり、ポタポタ血が落ちたりします。瘤を肛門の中に戻すと止まることが多いです。
- 痛み・・・瘤を脱出したままにしたり、脱出を繰り返すと痛みが出ます。
- 腫れ・・・瘤が脱出したままになると外側の正常組織を含めて大きく腫れ、強い痛みを伴います。
- 粘液が下着に付く・・・脱出したままにすると下着にドロッとした液体が付きます。
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痔核は、肛門の内側にある支持組織(肛門クッション)が弱くなることや、直腸粘膜のすぐ下にある静脈のうっ血によって発生します。
排便時のいきみなどによって支持組織の緩みに加え静脈がうっ血してふくれ、瘤になります。
瘤になることで排便時に便と一緒に外に押し出されるようになります。
最初は自然に戻りますが、何回も飛び出しているうちに周りの支持組織が引っ張られてさらに緩み、自分で戻さないと飛び出たままになります。
飛び出たままにしていると、ご自身の肛門括約筋で痔核の根元を締め上げている状態となり、どんどんうっ血して腫れあがり、激しい痛みとともに戻らなくなります。
それを嵌頓(かんとん)と呼びます。
嵌頓して戻らなくなると緊急入院・手術が必要になります。
そのほかの症状としては、出たり入ったりを繰り返すことで炎症を起こして痛んだり、痔核の表面がこすれて傷んだりするとボタボタ出血することがあります。
痔を発生させたり悪化させたりする要因としては、便秘等で排便時に強く長くいきむこと、過度の飲酒、刺激物を食べること、長時間座ること、出産、腹圧をかけるような仕事、長時間のスポーツなどが挙げられます。
痔核の分類
痔核は、内痔核(ないじかく)と外痔核(がいじかく)に分類されます。
肛門縁から1.5cmほど奥に入ったところに歯状線(しじょうせん)と呼ばれる肛門の皮膚(肛門上皮)と直腸の粘膜の境界線があります。
その境界線(歯状線)より内側(直腸側)にできた瘤を内痔核、外側にできた瘤を外痔核と分類します。
内痔核が悪化して歯状線より外側まで大きくなると内外痔核になります。
これらを分類するのは、内痔核単独、外痔核単独、内外痔核で治療方針が変わるためです。
痔核の治療方法(内痔核、内外痔核)
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保存的治療(手術以外の治療)
生活習慣の改善
十分な水分摂取と食物繊維を摂取し、便秘になりにくくすること、排便時に強く長くいきまないようにすること、過度の飲酒や刺激物の摂取を避けること、長時間座ったままにしないことなどが必要です。
薬の治療
内服薬としては、便が固い方は
便を軟らかくする薬を内服することで悪化を防ぐことができます。
腫れが強いときは、
腫れを引かせ、炎症を抑える薬を内服することもあります。
外用薬としては軟膏や座薬があります。どちらも炎症を起こして痛みや腫れが強いときには効果があります。
軟膏は肛門の外にも塗ることができます。
ただ、薬の治療では腫れを取ることはできますが、痔核自体を小さくして治してしまうことはできません。
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手術療法
保存的治療で治る可能性が低い場合は手術が必要になります(手術適応)。
手術適応となる症状は、脱出、痛み、出血です。
脱出の程度による治療方法についてはGoligher(ゴリガー)分類が用いられています。
Goligher(ゴリガー)分類
I度:排便時に肛門の中で膨らむが脱出しない。(保存的治療=手術以外の治療)
II度:排便時に肛門外に脱出するが自然に戻る。(手術適応だが保存的治療も可能)
III度:排便時に肛門外に脱出し、押し込まないと戻らない。(手術適応)
IV度:常に肛門外に脱出し、押し込んでも戻らない。(手術適応)
痛みや出血が続く場合は、大きさや脱出の程度にかかわらず、手術適応となります。
手術方法は以下のものがあります。
硬化療法(ALTA療法) (当院で日帰り手術が可能です)
硬化療法は
切らずに注射で痔核自体を固めてしまう方法です。
最大の利点は痛みが軽いことです。日帰り治療にとても向いています。
当院でも手術療法の第1選択としています。
さらに、1回で治らなくても何回か施行することができますが、1回の治療で治らない痔核は何回しても治りにくく、治療費もその都度かかるためお勧めできません。
ALTA療法単独の場合は、手術当日も車を運転して帰ることができます。
欠点は、内痔核しか治療できないことです。
内痔核の表面は粘膜、外痔核の表面は肛門上皮ですが、肛門上皮には痛覚があるので外痔核に薬剤を注射すると強い痛みを引き起こすのと、治療効果が落ちるためです。
治療効果としては、結紮切除術と比べると再発率が高くなります。
結紮(けっさつ)切除術 (当院で日帰り手術が可能です)
痔核に流入してくる血管を縛り(結紮)、痔核自体を切り取り(切除)、粘膜・皮膚を縫い合わせます。
利点は、痔核自体を切除するので確実に治ることと、様々なタイプの痔核に対しても行うことができます。
最大の欠点は痛いことです。
腰椎麻酔(半身麻酔)で行うことが多く、日帰り手術には対応していない病院が多いですが、当院では麻酔方法を工夫していますので日帰りで行うことができます。
術後の痛みに関しても痛み止めで十分にコントロールすることができますのでご安心ください。
ALTA+切除術(A・E療法 または E・A療法) (当院で日帰り手術が可能です)
ALTA療法の適応を外れる内外痔核に対して、
内痔核部分はALTA療法、外痔核部分は切除術を行う方法です。
利点は、結紮切除術より若干痛みが軽いことです。
欠点は、痛みが強いこと、ALTA療法より肛門が狭窄する危険性が高くなることです。
切り取る範囲が結紮切除術よりは少ないため若干痛みが軽くなりますが、痛覚のある外痔核部分を切りますのでALTA療法よりは痛みが強くなります。
また、肛門で最も狭い部分を切り取りますのでALTA療法より肛門が狭窄する危険性が高くなります。
近年、広まってきた治療法ですので再発率に関しては不明とされています。
当院では手術しなくてもよい状態のときは、できるだけ手術をしない方向で治療いたします。
無理に手術を勧めたり、一度で治らなかった治療を何度も勧めることもございません。
手術の方法についても複数の選択肢がある場合は、患者様の病状に応じて最も体への負担が軽く、痛みの少ない最適な手術方法を提案させていただきます。
外痔核
外痔核単独の場合は、そのほとんどが血栓性外痔核です。
血栓性外痔核とは、肛門の出口の静脈がうっ滞し、血栓ができる疾患です。
突然、肛門の外に豆粒ほどの血豆様の膨らみができ、強い痛みを伴います。
肛門の外にあるため、痛みで椅子に座れなくなることもあります。
治療方法は、痛み止めの内服と外用剤です。
通常、3日ほどで痛みは軽くなります。血栓は数週間~数か月で吸収されて消えます。
ほとんどの場合で切る必要はありませんが痛みが強く、1日も早く治したいときは、局所麻酔で少しだけ切り、血栓を摘出すると早く良くなります。
痔核と間違われやすい疾患について
患者様ご自身が痔核(いぼ痔)と思っていても、実際には痔核ではないこともよくあります。
代表的なものを以下に挙げます。
肛門皮垂(ひすい)
言葉の通り、肛門の皮膚が垂れ下がったものです。
痔核(いぼ痔)が腫れた後や脱出するときに肛門の皮膚が引き伸ばされ、腫れが取れて肛門の中に戻った後でも皮膚のたるみだけが肛門の外に残ることで発生します。
皮膚がたるんでいるだけで病気ではありませんので特別治す必要はありませんが、痔核の治療が必要になることがあります。
見張り疣(いぼ)
こちらは、裂肛(切れ痔)を繰り返すことによって切れた部分の外側の皮膚が盛り上がってくることで発生します。
こちらも特別治療する必要はありませんが、外見上の観点や排便後のふき取り時に触ることから日常生活のストレスとなることがあります。
盛り上がりが大きくなった場合は、切除することができます。
いずれの疾患も患者様ご自身で見分けることはできませんので、一度診察にお越しください。