痔瘻・肛門周囲膿瘍

痔瘻(じろう)・肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)とは

肛門の奥側から肛門周囲の皮膚にトンネルができる疾患です。
トンネルが皮膚を貫通すれば痔瘻貫通することができなければその手前で膿(うみ)がたまり肛門周囲膿瘍となります。


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肛門縁から2㎝奥に皮膚(肛門上皮)と直腸粘膜の境界があり、歯状線と呼ばれています。

歯状線には肛門陰窩(こうもんいんか)と呼ばれるくぼみがあり、そのくぼみの中に粘液を出す肛門腺が開口しています。

便の中の細菌が肛門陰窩から肛門腺に感染を起こすとトンネル状の瘻管(ろうかん)になり、奥に延びていきます

肛門周囲の皮膚をそのまま貫くと肛門周囲の皮膚から膿(うみ)が出るようになり、痔瘻となります。

皮膚を貫くことができなければその手前で膿がたまり、肛門周囲膿瘍となります。

肛門の中の入り口を原発孔(げんぱつこう)お尻側の出口を二次孔(にじこう)と呼びます。


痔瘻・肛門周囲膿瘍の症状

痔瘻の症状

肛門の近くから膿が出ます

膿が出ているところの周りが少し腫れたり、痛みを伴うことがあります。

肛門周囲膿瘍の症状

突然、肛門の近くが痛くなり、だんだんと肛門周囲が赤く腫れあがります

痛みは治まらないことが多く、座れなくなったり、数日経つと熱が出ることがあります。

痔瘻の治療方法

痔瘻は基本的には手術が必要になります
しかし、瘻管(トンネル)がしっかりしていなかったり、分岐していたりすると手術をしても再発しやすく、治りにくい疾患とされています。
また、長年経過すると癌が発生することがあります。

手術療法


切開開放術  (当院で日帰り手術が可能です)

入り口(原発口)から出口(二次口)までを切り開く方法です。

利点は、他の術式よりも治りやすいことです。

欠点は、痛いこと、肛門が変形したり肛門括約筋の機能が一部失われる可能性があることです。

肛門縁からの距離が近い場合や、括約筋への影響が少ない後方の痔瘻にお勧めの術式です。


括約筋温存手術  (当院で日帰り手術が可能です)

瘻孔を出口(二次口)側から入り口(原発口)側に向かってくり抜き、入り口を縫い閉じる方法です。

利点は、文字通り肛門括約筋の機能を温存できることです。

欠点は、切開開放術ほどではありませんが痛いこと、他の術式に比べて再発率が高いことです。


シートン法  (当院で日帰り手術が可能です)

瘻管にゴムやシリコン製のひもを通して時間をかけて外来で少しずつ締めていく方法です。

利点は、痛みが軽いこと変形が少ないこと肛門括約筋機能が温存されることです。

欠点治るまでに時間がかかり、その間、肛門に輪っかが通っていることです。

痛みが少なく治したい場合にお勧めの術式です。

当院では、痛みが最も軽く肛門括約筋機能も保たれるシートン法を中心にすべての術式に対応しています
切開開放術は肛門縁から近い場合や括約筋への影響が少ない後方の痔瘻に施行しています。

【当院で治療できない痔ろうについて】
痔ろうのトンネルが2本以上に枝分かれすると複雑痔ろうと呼ばれます。

複雑痔ろうは治りにくく、入院治療が必要となります

肛門周囲膿瘍の治療方法

肛門周囲膿瘍の治療は速やかに切開して膿を外に出すことです

当院では、超音波診断装置を用いて膿までの最短ルートを見極め、大きく切開しなくても効率よく膿を出すことができるようにしています

さらに、抗生剤と痛み止めを併用します

放置すれば痛みや腫れが強くなり、治るのにも時間がかかりますので早めの受診をお勧めします

また、肛門周囲膿瘍では入り口(原発口)から膿までの間の瘻管(トンネル)はしっかりしていないことが多く、手術をしても見つけにくい場合がほとんどです。
原発口と瘻管が見つからないと手術をしても治る可能性が低くなります。

当院では、初めての場合は切開・排膿のみを行い、治る可能性の低い根治手術はしないようにしています

繰り返して痔瘻になった場合に根治手術を行っております。