そけいヘルニアについて

そけいヘルニアとは

医学用語で臓器や組織が本来あるべき場所から飛び出すことをヘルニアといいます。

そけい部とは太ももの付け根のやや上の部分のことで、そこからお腹の中の臓器が飛び出してくる疾患をそけいヘルニアといいます。
腸が脱出することが多いので脱腸(だっちょう)とも呼ばれています。

そけいヘルニアの原因

そけいヘルニアの原因は大きく分けて2つあります。


そけい部の筋肉が弱くなること

鼠径部にはいくつもの筋肉が集まっていますが、しっかりした筋肉が少なく、比較的弱い構造になっています。

それらの筋肉の隙間を縫って、男性では睾丸(精巣)への血管と管(精管)、女性では子宮を固定するための靱帯(子宮円靱帯)が通っています。

元々、管が通るための隙間がありますが、加齢によって筋肉が弱くなるとその隙間が広がりやすく、お腹の中の臓器が飛び出すようになります。
過度な腹圧上昇をきたしやすい力仕事やスポーツ・筋トレ、便秘や慢性の咳も原因となることがあります。

そのほか、同じように弱くなった筋肉が破れることによって生じるタイプのそけいヘルニア(内そけいヘルニア)もあります。


突起状になった腹膜の遺残

男性では胎児の時に睾丸(精巣)が陰のうに降りていきますが、腹膜もいっしょに降りて行って刀の鞘(さや)状の突起(腹膜鞘状突起(ふくまくしょうじょうとっき))を形成します。

この突起状の袋は生まれるまでに閉じますが、それが閉じずに残ることがあります。
その残った袋の中に腸が脱出するとそけいヘルニアになります。

小児のそけいヘルニアはこのタイプです。
袋の遺残はあるものの子供の頃には出ず、成人になってから出ることもあります。
当院では小児(15歳以下)の診療は行っておりません。

そけいヘルニアの症状

そけいヘルニアの症状で最も多いのはそけい部(太ももの付け根のやや上の部分)のふくらみです。

立ったり座ったりした状態でふくらみ、仰向けに寝ると引っ込むことが多いです。
男性ではお腹と太ももの境を超えて陰のうに達し、500ml缶以上の大きさになることもあります。

次に多いのが痛みや違和感で、飛び出した内容でヘルニアの出入口が拡げられたり、神経が圧迫されることによって生じます。

そのまま放置すると、ふくらみがだんだん大きくなっていきます。
そしてある時突然、痛みとともに戻らなくなります

それを嵌頓(かんとん)といいます。
腸は1本の管のような臓器ですので嵌頓を起こすと腸閉塞になって激しい腹痛や嘔吐を繰り返します。
それだけでなく、狭い出入り口で腸が締め付けられ、緊急手術でそれを解除しなければ脱出した腸が腐って穴が開き、命にかかわる状態になります

一定の大きさを超えるといつ嵌頓してもおかしくない状態になりますので早めの手術をお勧めします

そけいヘルニアかどうか判断できない場合

そけいヘルニアと思って来院いただいたところ、そけいヘルニアではなく別の病気だったということも珍しくありません。
外科以外の医師からの紹介でも同様のことがあります。

そけいヘルニアは専門の外科医が患部を診察すれば診断できますので、太ももの付け根に異常を感じた場合は遠慮なくご相談ください

そけいヘルニアの治療方法

そけいヘルニアは自然に治ることはありません

唯一の治療方法は手術です

お腹の壁に穴が開いている状態ですので穴をふさがない限り治りません。

昔はヘルニアバンドというベルトのようなものできつく締めて出てくるところを抑える製品がありました。
しかし、それを装着してもヘルニアは隙間を縫って出てきますのでいずれ手術が必要になります。

さらに手術までの期間が長くなると飛び出しが大きくなり、出たり入ったりを繰り返すことで癒着や炎症を起こし様々な弊害が出てきます。
具体的には飛び出しが大きいほど、手術をした後の腫れも大きくなります。
また、ヘルニアの出入口が大きく拡がっていると手術後再発の危険度が増しますので、そけいヘルニアが確定したときは早めの手術をお勧めします

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